インターネット時代において、情報は企業の最重要資産の一つです。その情報が紙の媒体に記録されたものが「文書」です。
一般企業であれば、顧客管理データ、人事労務関連資料、営業計画や財務諸表、IR文書などが機密文書にあたります。物流・運送会社なら、運転日報や車両台帳など、医療・介護関係者なら、カルテ、入院記録、介護記録など、学校関係者なら、パンフレット、入試要項、試験問題、解答用紙、シラバス、論文草稿などです。さらに、個人であれば日記や領収書の他に、転職時や退職時に処分したい文書類があると思います。
「文書」というものは、企業であれば利害関係者にとっての「共通言語」です。別の表現をすれば、企業の文化や思想、戦略を事業活動へ具体化、細分化していった結晶物とも言えます。
これら文書が社内に溜まり続けるとどうなるでしょうか?
「文書」が適切に保管・処分出来ていない会社は、「情報肥満体質」な会社と言えます。使用していない情報が雪だるま式に増え続けることで、ビジネスを整理する力や戦略を立てる力、もっと言えば思考する力が知らず知らずの内に衰えているのです。
経営者の仕事は選択と決断とも言われますが、そもそも必要な情報の量と質が足りていないことが多いのです。過去の情報を探すのに時間をかけたりすることもあるかもしれませんが、1ヶ月間使用していない情報であれば、その価値はほとんどないと言っていいでしょう。
予期せぬ事が頻繁に起きる今日では、過去の情報をもとにした経営ではスピード感も落ち、どうしてもフォロワー的な対応を強いられます。もちろん過去の情報でも役に立つものもありますが、それはそのまま文書として保管するというより、その情報の概念、要点、方針などに昇華させてまとめておけば良いのです。
差別化をしなければ生き残れないと分かりつつも、多くの企業が目の前の課題に対応することで一杯一杯かもしれません。新しい事業アイデアを考えようにも、なかなか考える時間がない、あるいは考える方法を知らないのかもしれません。SDGsやサーキュラーエコノミーといった概念がブームのようになっていますが、基本的な思想は江戸時代から何ら変わっていないのです。
ですから、まずは、すぐに出来て事業活動の具体的な成果物である文書をマネジメントすることから始めてみませんか、ということです。文書を定期的に処分することは、今までの業務やサービスを見直し、新たな活動を創造するきっかけにもなります。「捨てる」をマネジメントすると、組織に新しい知が入り込みます。
経営学者のドラッカーの言葉を借りれば、「廃棄はイノベーションの鍵」です。