【コラム】廃棄はイノベーションの鍵
2020年1月に国内で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されてから、テレワークをはじめ、私たちの働き方が大きく変わりました。DX実現のためにデジタル化もすすみ、それに伴い、個人情報管理のあり方も大きく変える時期に来ているのではないでしょうか。
弊社は業界に先駆けて2003年から機密文書処理サービスを始めました。今でこそ宅配会社や物流会社、オフィス機器メーカーが機密文書処理を新規事業として手がけることが増えていますが、紙や文書廃棄の専門知識を持ち、収集運搬から処分まで自社で完結するシステムとノウハウを持っている弊社とは一線を画しています。
2003年と言えば、個人情報保護法が施行され、個人情報というものが世の中で少しずつ認知され始めました。その後、インターネットとグローバル化の進展により企業も個人情報が入った文書(情報資産)の管理が厳しく求められるようになってきました。文書管理の実情を言えば、大企業であっても、文書に蜘蛛の巣やカビが生えた状態で長期間保管していたり、誰にでもアクセスできる場所に重要な書類が無造作に置かれているといったイタい事例が多々見受けられます。担当者が頻繁に異動することで文書管理がずさんになったり、そもそも管理する担当者を決めていない会社もあります。
2014年7月に通信教育最大手のベネッセで通信講座「進研ゼミ」を利用した子供や保護者の情報が約2,300万件流出した事件を覚えているでしょうか?業務委託先の従業員が約3,500万件の顧客情報を持ち出し、名簿業者に売却してしまった事件です。ベネッセは対象者におわびとして500円分の金券を送りました。顧客らが複数の集団訴訟を起こし、1万人以上が原告となっています。東京高裁は2020年3月25日、計622人に対し、1人当たり3,300円を支払うようベネッセ側に命じました。その総額は約200万円になります。ベネッセが負担する金額としては大したものではありませんが、社会への信用を失墜してしまいました。似たような個人情報の漏えい事件は、10年経った現在でも日本全国で毎日のように同じような事件・事故が起きているのが実情です。
インターネット社会になり、情報は企業の最重要資産の一つとなりました。その情報が紙媒体に記録されたものが「文書」です。文書というものは企業にとっての「共通言語」、別の表現をすれば、企業の文化や思想、戦略を事業活動へ具体化していった結晶物とも言えます。これら文書が社内に溜まり続けるとどうなるでしょうか?
文書が適切に保管・処分出来ていない会社は、「情報肥満体質」な会社。使用していない情報が雪だるま式に増え続けることで、自由に機敏にビジネスを動かす力が知らず知らずの内に衰えています。経営者や幹部の仕事は選択と決断とも言われますが、そもそも必要な情報の量と質が足りていないことが多いのです。過去の情報を探すのに時間をかけたりすることもあるかもしれませんが、現代社会では3ヶ月間使用していない情報であれば、その価値はほとんどないと言っていいでしょう。
「捨てる」をマネジメントすることから、新しい知(血)が企業に入り込む。まさに、「紙(神)は細部に宿る」のです。文書を定期的に処分することは、今までの業務やサービスを見直し、新たな活動を創造するきっかけにもなるでしょう。「捨てる」をマネジメントすると、組織に新しい知が入り込むのです。経営学者のドラッカーも言っています。「廃棄はイノベーションの鍵」であると。